おそらく一時は暗号資産で最も重要な金融機関だったシルバーゲート銀行(Silvergate Bank)は、大量の顧客からの預金引き出しにダメージを受け、連邦住宅貸付銀行からの融資でも立ち直ることができず、銀行事業を清算することとなった。
連邦預金保険公社(FDIC)との話し合いは、清算を回避し、流動性を支えるためだったと報じられたが、振り返ってみれば、最後のトドメとなったようだ。
暗号資産の可能性とチャンスをいち早く捉えたシルバーゲート銀行は、ボラティリティの高い世界で大きくなり過ぎ、ゾンビのような存在になってしまった。
シルバーゲートは暗号資産企業から莫大なお金(2022年9月末時点で約132億ドル、約1兆8000億ドル)を預かり、米国債や他の債券などに投資していた。しかし、暗号資産取引所FTXの破綻後、顧客の引き出しが殺到し、連邦住宅貸付銀行からの融資の返済も重なって、国債や債券を満期前に売却することを余儀なくされた。2022年第4四半期には、売却により10億ドル(約1350億円)の損失を計上したとされる。
正直に言って、暗号資産業界にとって状況は芳しくない。しかし一方で、今の状況がチャンスとなる者もいる。シルバーゲート銀行の清算がメリットとなるのは誰だろうか? 可能性の高い4者を見ていこう。
1.他の銀行
シルバーゲート銀行の清算で最も直接的なメリットを受けるのは、その競合たちだ。コインベース、パクソス・トラスト(Paxos Trust)、ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)など、危険を嗅ぎ取った数々の暗号資産企業が「慎重には慎重を期して」ニューヨークに拠点を置くシグネチャー銀行(Signature Bank)に乗り換えていった。
ただしその後、シグネチャー銀行も州当局によって事業停止となった。預金は全額保護されることになったが、暗号資産企業の多くは、お金をどこかの銀行に預けなければならない。規制当局が銀行に対して、暗号資産企業との取引に関して注意を呼びかけても、暗号資産業界は額面上はお金を潤沢に持った業界であることに変わりはない。
ブルームバーグのマット・レヴィン(Matt Levine)氏は、シルバーゲート銀行の問題は必ずしも、暗号資産自体に起因するものではないと指摘。
「取り付け騒ぎ」はシルバーゲート銀行のビットコインローン事業が崩壊したことや、暗号資産顧客の破綻(FTX破綻は直接の原因ではない)から始まったのではなく、「(国債や地方債購入による)長期的貸付のために(暗号資産企業から預金を引き受ける)短期的な借入を行うという、一般的な銀行業務」から発生したと述べた。
もちろん、規制上の懸念やリスクはある。しかし、だからこそデュー・デリジェンスを行う。暗号資産企業に銀行サービスを提供することが明確に違法ではない限り、暗号資産企業からの取引申請をフィルタリングするチャンスが銀行にはある。
そうでなければ論理的に考えて、ほぼすべての暗号資産企業が支払い不能に陥っていることになるが、シルバーゲートから80億ドル(約1兆800億円)が引き出されたことから、その可能性は低い。そのお金は、落ち着き先が必要だ。
2.ステーブルコイン
データサイトのカイコ(Kaiko)のアナリストは6日、顧客が資本を簡単にやり取りできるようにシルバーゲート銀行が開発したシルバーゲート・エクスチェンジ・ネットワーク(SEN)が運用停止と伝えられたことで、「トレーダー間でステーブルコインがより普及するだろう」と述べた。
暗号資産企業はすでに、米ドルと連動するステーブルコインの仕組みに馴染みがある。2022年には中央集権型取引所におけるステーブルコインの取引が全取引の79%から90%まで増加。カイコのアナリストによれば、特に米ドルベースの取引ペアにステーブルコインが取って代わった。
アメリカの民間ステーブルコイン発行企業も、銀行との取引で問題を抱えており、シルバーゲートとシグネチャー、さらにはシリコンバレー銀行の破綻によって多くが影響を受けるだろう。例えばサークル(Circle)は、流通するUSDコイン(USDC)を裏付ける同じ価値の資産を保有していると約束しているが、その資産はどこかに保管しなければならない。
しかしより小規模な企業の場合、現金からステーブルコインへ換金することで済む可能性が高い。
3.ヨーロッパ
アメリカとは異なり、EUは暗号資産エコノミーの規制について先回りしたアプローチを採用している。「Market in Crypto-Assets:MiCA」法は、まもなく施行が予定されており、暗号資産企業と、それらにサービスを提供する金融機関に対して規制上の明確性をもたらすことになる。
アメリカにおける暗号資産の問題は、海外での起業を検討する企業のトレンドをさらに加速させることになるだろう。
カイコのアナリストが指摘した通り、「BTC-ユーロペアは先週、過去最高のマーケットシェアを記録。数週間でマーケットシェアが約3倍となった」ことに、それが表れている。
4.決済企業
暗号資産金融サービス企業BCBグループ(BCB Group)のオリバー・フォン・ランズバーグ-サディ(Oliver von Landsberg-Sadie)CEOは6日、同社の決済事業部門は「SEN」不在で空いた穴を埋めるために米ドル対応機能を追加する計画を加速していると語った。
BCBは2020年、リアルタイム決済ネットワーク「BCB Liquidity Interchange Network Consortium」を開始。現在はユーロ、英ポンド、スイスフランに対応している。
銀行向けに暗号資産へのオンランプを提供するBCBのような企業は、リスクを吸収する方法として、ますます価値が高まっている。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/177272/
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