BCH・BSV半減期によるBTCの影響
仮想通貨(暗号資産)データ分析サイトCoin Metricsは最新報告で、迫るビットコインキャッシュとビットコインSVの半減期を受け、マイナー(採掘者)がビットコインのマイニングに移る可能性が高いと指摘した。
3月以降の大幅下落を受け、ビットコインなどのマイニング業者(採掘者)では撤退事例も指摘される。そのような背景にある中、Coin Metricsは、ビットコインキャッシュとビットコインSVの半減期イベントが、状況をより悪化させる可能性があると論じている。
ビットコイン誕生から10年強しか経っていない仮想通貨市場では、ビットコインでさえ今回が3度目の半減期であり、過去の市場動向データに不足がある。2017年には、バブル相場で市場規模が急拡大したため、半減期をどこまで材料視するか、投資家の見方も二分されている状況と言える。
一方で、最も重要とされるのが「マイナー動向」だ。市場規模の拡大と共に勢力を伸ばしてきた仮想通貨マイナーにとって、先行き不透明な初めての半減期とも指摘される。
今回の問題は、ビットコインから派生して誕生した通貨が今回の半減期で複数ある点にある。ビットコインから派生した通貨であることから、PoWマイニングの通貨で、半減期も存在する。
しかし、各通貨でブロック生成のタイムラグが発生しており、半減期を迎えるタイミングは一律ではない。
BCH・BSV・BTCの半減期予定日(4/1時点:Coin.Dance参照)
ビットコインキャッシュ(BCH):約7日後
ビットコインSV(BSV):約9日後
ビットコイン(BTC):約40日後
今回の調査報告書で指摘されたのは、BCH、BSVの半減期がBTCより先に訪れることでの市場への影響だ。
主にマイナー動向に関する内容を取り上げて紹介する。
半減期で何が起こる?
半減期とは、仮想通貨マイニングの報酬が半分(半減する)になるタイミングを指す。
半減期の実施される時期は、ビットコイン、ビットコインから派生した通貨共に、ブロック数63万ブロック目で実施される。
半減期の時期がズレるのは、このブロック到達時までのブロック生成でブレが生じたため。マイニングの難易度を調整する仕組みが異なる点や、それぞれのマイニング状況(ハッシュレート・難易度等)が異なる状況が影響した。
半減期で減少するマイナー報酬は、3つのブロックチェーンは一様に採掘の報酬が12.5から6.25に半減する。インフレ率では3.6%から1.8%に低下する見込みだ。
予備知識:SHA-256アルゴリズムを採用するBTC、BCH、BSVについては、マイナーは同一マシンを用いて、任意にマイニングする通貨を選択することができる。
半減期後のマイナー動向
多くのマイナーは、ブロックチェーンに貢献することではなく、ビジネスとして仮想通貨マイニングを行なっている。
ここで生じた問題は、先に半減期を迎えた通貨と、後に半減期を迎える通貨で、一定期間大幅な収益性の差が生じる点だ。ビジネスで行うマイナーは、理論的には収益性が高いチェーンにハッシュを移し、マイニングを合理的に行うと予想されている。(最終的には、難易度調整や、マイナーの移動などを受け、収益性の差は埋まっていく)
Coin Metricsも最新報告で、「BCHとBSVが半減期を迎えても、BTCは1か月ほど12.5のブロック報酬に留まるため、マイナーは余裕をもって多くのハッシュパワーをビットコイン(BTC)に移す可能性が高い」と説明する。
しかし、ハッシュレートが集中化することで、ビットコインネットワークの競争率が激化するため、一概にビットコインマイナーにとっても良い状況とは言い難い。ハッシュレートの移行状況次第では、難易度が段階的に上昇する可能性があり、半減期の報酬減も影響して、各マイナー利益がさらに低下する可能性があるという。
最も大きな誤算は、半減期を材料に、仮想通貨価格が大きく上昇しなかった点。
新型コロナウイルス蔓延に伴う世界的な経済危機も、ビットコインマイナーにとって致命的なタイミングであり、半減期後により多くのマイナーが撤退せざるを得ない状況に陥る可能性も十分にあると指摘した。
一方で、マイナーの撤退行動は、収益性を維持できなかった業者がネットワークのシェアを失うまでは、市場の売り圧力を高めることに繋がるが、長期目線で見れば、価格を上昇方向へサポートすることに繋がると説明する。
赤字の業者が淘汰されることで、最も効率的な生産コストを維持できるマイナーのみが市場に残るからだ。生き残ったマイナーの利益率は改善され、結果的に長期的な売り圧力の低減に繋がり、価格が上昇する好循環に移行する。結果として、大規模な売り圧力が解消されることで、価格は底打ちし、結果的な価格の上昇サポートへと発展する可能性もあると指摘した。
大手マイナーのBitmainのジハン・ウーも、半減期後すぐに強気相場が訪れることはなく、多少のズレが生じると発言したのも、このポイントに理由があると予想される。
最終的には過去最高値(BTC=20,000ドル)を更新すると考え悲観視していないとする反面、半減期後すぐに、その希少性が評価される(価格に直結する)わけではないと論じた。
市場からは、これもマーケットの需給関係と、撤退マイナーの売り圧力を踏まえた上での発言との見方も出てきている。
マイナーの撤退と売り圧力について
直近の難易度調整を見ると、ビットコインは3/26に史上2番目の下方調整ととして-15.95%と易化している。
Coin Metricは、過去の歴史における半減期に際する難易度調整のデータを見ても、26日の下方調整は前例のないケースであり、一時的に「損益分岐点」を割り込んだマイナーが多く発生し、撤退したことを示すデータであることは明らかだと説明。半減期を経て、マイナーの大規模な撤退事例に繋がる可能性があることを指摘した。
マイナーの売り圧力
この状況を踏まると、投資家が把握しておくべき情報は、マイナーの売り圧力である。
Coin Metricsによれば、売り圧力が理由となって、マイナーの収益性と仮想通貨市場の価格サイクルは密接な関係にある。マイナー収益が売り圧力に直結する理由は、得られる収益と支払うコストで、通貨の性質そのものが異なるためだ。
マイニングコストには、マイニングハードウェア、電気代、冷却代、施設のレンタル料、サーバーメンテナンス費、インターネット接続費、人件費、保険代、法律サービス料、税金などが含まれる。しかし、従来型の企業は、支払いを受け付ける際、仮想通貨に対応していないため、コストを賄うための法定通貨(現金)が必要となる。
一方、マイナーの収益源は、主にマイニングで獲得したビットコイン(BTC)などの仮想通貨であることから、コストを支払う際に、大規模な換金が必要になる。
マイナーは、業界への参入や撤退、設備の追加購入、事業の拡大など、状況を見た判断を自身で決定することができるが、価格のボラティリティによって、利益率が大幅に変化するため、短期的なコスト確保の選択を迫られるケースがあるという。これが、売り圧力に直結する理由である。
Coin Metricsによると、価格が上昇しているタイミングでは、新たな機械に投資するルーティンは遅くなる傾向にある。(価格によって、機器代金が上がることも理由か)
一方で、下落相場のタイミングでは、電気代などを賄うために売却を強める傾向があるとしており、負のサイクルを生み出すことにも繋がると指摘した。
マイニング業者の利益率が大幅低下するタイミングでは、マイナー主導の下落トレンドに繋がる可能性も必然的に高くなる。特に、淘汰のシーズンを生き残ることさで、次のフェーズで競争優位性を獲得しやすいマイナー間競争では、バランスシート上で管理していた「内部留保」ですら、市場への放出を厭わないと説明。
これらの市場サイクルは、ビットコインの歴史のなかで定期的に観測されるバブルやクラッシュを裏付ける一要因だと指摘した。
一方、直近では、ビットコインを担保にした法定通貨の借り入れが行える仕組みも整備され、長期的な上昇を見据えたマイナーが、事業規模拡大に舵を切るための環境も整い始めている。Coin Metricsは、「デリバティブマーケットもその一環であり、仮説としてレンディング市場の健全化は、ビットコイン市場とマイナー売り圧力の悪循環を変えるきっかけになる可能性もある」としている。
下図が年間マイニング収益を示す。2020年現在では、2017年のマイニング収益水準に落ちている。2017年アルトコインバブル時、ビットコインの時価総額ドミナンスは一時40%を下回っていた。
Coin Metricsは総括として、『継続的な利益率の水準低下⇨売却増加⇨降伏⇨非効率マイナーの淘汰』という市場サイクルを踏まえ、「当サイクルが一巡すれば、マイニング業界は今後の上昇トレンドを支えるより健全な状態に戻り得る」との見解を示している。
参考資料:https://coinpost.jp/?p=142300
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Source: Ripple(リップル)仮想通貨情報局