暗号資産(仮想通貨)市場の分析は、伝統的市場よりも簡単に思えるかもしれない。ブロックチェーン技術は多くの透明性を備え、誰でもオンチェーンデータを分析できる。
ただ、現在と将来の価格トレンドへの洞察を与えてくれる数字を見定めることは難しい。ブロックチェーン分析サービスのチェイナリシス(Chainalysis)でチーフエコノミストを務めるフィリップ・グラッドウェル(Philip Gradwell)氏は、トレーダーがチェックすべき5つのオンチェーン指標をあげた。
取引所への流入量:Exchange inflows
「私が毎日、最初にチェックする指標は、取引所への流入量」(グラッドウェル氏)
投資家は一般的に、暗号資産を現金化する際、暗号資産を自分のウォレットから取引所に移動させる。一方、市場に対して強気な見方をしている時は資産を直接保有する。
強気市場における流入量の増加は、投資家が上昇傾向に対して自信を持っていないサインと見ることができる。
「大量の流入がある時は、慎重になるべき時だろう」
とはいえ、取引所に流入したからと言って、すぐに現金化されるわけではない。投資家は好きな期間、取引所で暗号資産を保有することができる。
「従来、取引所に流入した暗号資産は12〜36時間経ってから現金化されている」
つまり、この指標はパズルの一片に過ぎない。取引所に移された暗号資産がいつ売却されるかはわからない。流入量の増加や売り圧力はしばしば、同等か、さらに強い買い圧力と対峙することになる。
例えば、ビットコイン価格が大きく下落した4月18日朝、取引所への流入量は上昇していた。
取引強度:Trade intensity
取引所への流入の供給サイドへの影響を見極めるためには、流入した暗号資産が取引された回数を測る「取引強度」を確認しながら、需要サイドの動向をチェックする。
「この指標は、取引所に流入したビットコインをどれくらいの人が買っても良いと考えているかを示している」
取引強度の上昇は、買い手が売り手を上回っていることを示し、トレンドの強さを表す。
取引所への流入量と取引強度は短期的な市場の状態を見ることに役立つが、以下の3つの指標は長期トレンドに関連している。
取引所間フロー:Exchange flows
投資家は、米ドルなどの法定通貨、あるいはテザー(USDT)のようなステーブルコインを使って暗号資産を取引する。
取引所には、法定通貨を使って暗号資産を取引するところ(crypto-to-fiat)と、ステーブルコインを使って暗号資産を取引するところ(crypto-to-crypto)、さらにデリバティブ取引所がある。
たとえば、法定通貨を使う取引所(crypto-to-fiat)への暗号資産の流入の増加は、投資家が現金化(=売却)に関心を持っていることを示す。一方、ステーブルコインを使う取引所(crypto-to-crypto)への流入は、投資家が取引に意欲を見せていることを示し、ステーブルコイン発行量の増加を今後の価格上昇の大きなサインと捉えることができる。
流動性:Liquidity
流動的エンティティと非流動的エンティティ(エンティティ:ネットワーク内で同じ参加者によって管理されているアドレス群)を追跡することで、市場でのホドル(長期保有)心理をチェックできる。
本質的に非流動的エンティティは、暗号資産の長期的見通しを信じ、暗号資産を貯め込んでおり、市場の売り圧力を弱める。つまり、非流動的エンティティ数の継続的な増加は、強い長期保有心理のサインであり、強気指標となる。
ブロックチェーンでの価値の移動量:Value transfers across blockchains
価値の移動量は、ブロックチェーン上を移動した1日あたりの価値を米ドルに換算したものだ。本質的にブロックチェーンの利用状況を表しており、取引回数の増加を伴う。
「暗号資産がより多く使われている時は、より多くの需要があり、価格を上昇させる」
かつては、ビットコインが市場の動きを牽引していたため、ビットコインの動きに注目していればよかった。
しかし2020年、イーサリアムべースのDeFi(分散型金融)の爆発的な成長によって状況は変わった。投資家はイーサリアムなどビットコイン以外の暗号資産のチェーン上の動きをチェックすることが必須となった。
暗号資産市場が成長し、成熟していくなか、より詳細なデータ分析への需要は高まるだろう。
「オンチェーンデータでは、アドレスのような基本的なものから、取引所への流入量のような経済的な指標まで、まずは最初に行う必要のある作業が数多くある。しかし一度行ってしまえば、ユーザーは行動し、決断を下すための意味あるデータを手にすることができる」とグラッドウェル氏は述べた。
参考資料:
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Source: Ripple(リップル)仮想通貨情報局