ユーロポール(欧州刑事警察機構)の欧州サイバー犯罪センター(EC3:European CyberCrime Centre)は、ビットコインの取引秘匿機能を搭載する「ワサビウォレット」が、犯罪捜査に支障を与える可能性を示唆する報告書をまとめた。同報告書はユーロポールの内部資料として作成されたが、ネット上に流出したことで、その内容が明らかになった。
ワサビウォレットが商用化されたことで、法執行機関にとっては「思わしくない」状況を生んでいると、欧州サイバー犯罪センターはブロックチェーンデータ分析のチェイナリシス(Chainalysis)が集計したデータを引用して、同報告書の中で述べている。
「チェイナリシスによると、過去3週間で約5000万ドルのビットコイン(BTC)がワサビウォレットに入金され、そのうちの約3割はダークウェブ市場から移動したもの。ダークウェブでの取引は全体の1%程度と推定されることを考えると、これは比較的大きな金額と言える」(報告書)
ワサビウォレットの取引秘匿機能
ワサビウォレットは、ビットコインの透明性を回避するツールで、取引を暗号化し、追跡を混乱させることでユーザーのプライバシーを保護する機能がある。欧州サイバー犯罪センターは4月に同報告書の前半部分をまとめ、翌5月に後半部を作成している。
報告書の後半部では、法執行官がブロックチェーン上のワサビウォレットの取引を検出する方法と、同ウォレットを利用した取引方法を説明。
ユーロポールが示した懸念は、捜査当局や規制当局と、ビットコインのプライバシー擁護者との間で続く緊張状態を浮き彫りにしている。
ブロックチェーンの利点の1つである透明性は、捜査当局が口座や取引内容を調査し、犯罪者を追跡するためには有効に働く。一方、プライバシー擁護者は、ビットコイン取引の秘匿性を重視する。
オンラインに流出した報告書
この報告書はメッセージングツールのテレグラム(Telegram)上に流出し、ユーロポールの広報担当は、流出した報告書が本物であることを認めている。広報担当は、CoinDeskの取材に対して、報告書は「ユーロポールの関係者のみ」に向けて書かれたもので、「運用上の情報は一切含まれていない」としている。
同報告書では、ワサビウォレットの利用状況に関する質問に対して、「(ユーロポール)が関心を持つべき程に、(ワサビウォレット)は人気を集めている」と記されている。また、ワサビウォレットを利用した取引内容は解析可能かという問いに対し、「現実的に、ほとんどの場合、答えは否定的だ」と記載された。
CoinDeskは、ワサビウォレットを開発したzkSNARKsに取材を試みたが、返答は得られなかった。同社の企業価値は、カナダのサイファーパンク・ホールディングスが出資したい時点で、約750万ドル(約8億円)と評価されている。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/65969/
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