あまり知られていないが、実は日本では、お酒を飲む人より飲まない人の方が多い。今回紹介する『ゲコノミクス』は、「飲まない人=下戸(ゲコ)」の持つ潜在的な消費パワーに着目した経済書だ。新型コロナの影響で「飲みニケーション」のあり方は大きく変わりはじめた。本書には、新しい生活様式に対応するビジネスのヒントが数多く詰まっている。著者の藤野英人氏は1966年の富山生まれです。国内・外資系の大手運用会社でファンドマネージャーとして働いた後、2003年に投資信託や企業年金の運用などの資産運用会社、レオス・キャピタルワークスを創業しました。現在は同社の代表取締役社長・最高投資責任者を務めています。
実は藤野氏は酒を飲みません。本人は「ゲコノミスト」を自称しています。これは「お酒を飲めない・飲まない・飲みたくない人」を示す造語です。お酒を飲まない人は、世の中から正当な扱いを受けられず、つらさをため込んできました。著者は自らの体験を次のように振り返ります
たとえば、私はよくお酒を飲む人から「飲めそうなのにね」といわれます。悪意のない言葉だとわかってはいても、こういわれるとまるで相手の期待を裏切ってしまったようで、残念な気持ちになってしまいます。また「お酒が飲めないなんて、人生の楽しみの半分を失っている」などというのもよくいわれることですが、それはお酒を飲む人だからそう思うのであって、ゲコにとってお酒は楽しみでもなんでもありません。こういったことをいわれて「余計なお世話だ」と感じるゲコの人は多いはずです。
昔は、仕事関係の人から「酒が飲めないのによくファンドマネジャーができるな」といわれることもしょっちゅうありました。「お酒を酌み交わさなければ腹を割った話はできない」などと考える人もいるのです――私はそうは思いませんが。
(序章 ゲコノミクスについて、大マジメに語ろう 22ページ)
「ゲコノミストに光をあて、『お酒を飲まない』ことを尊重する人を増やすこと」が本書のゴールの一つです。著者は19年6月にフェイスブックで「ゲコノミスト(お酒を飲まない生き方を楽しむ会)」というグループを立ち上げました。発足にあたって「平成の時代まではゲコは冷遇されていたが、令和の時代になってついに全国のゲコは立ち上がることになった」で始まるマニフェストを掲げています。会員数は、すでに3500人以上になったそうです。本書には、こうした会員の体験談や意見も数多く掲載されています。副題は「巨大市場を開拓せよ!」です。その潜在力はいかほどなのでしょうか。日本のアルコール飲料市場は出荷ベースで、3兆6000億円です。この数字をもとに著者はゲコノミクスの市場規模を約3000億円と試算します。そして、この市場を開拓するためのヒントが第4章で提示されます。ここでは非アルコール飲料のマーケティングについて、鍵となるコンセプトがいくつか挙げられています。
「ゲコ=客単価が低い」とは限らないと著者は強調します。お茶が1本60万円もする世界だってあります。フレンチやイタリアンにはワインが欠かせないという認識も変わりつつあります。最近はアルコール、ノンアルコールに関わらず食事や店の雰囲気に合う飲み物を提供する「ペアリング」が人気になってきました。ノンアルドリンクを提供することが客単価を上げ、競争力の強化につながるのです。「ゲコ」をターゲットにした経営の視点について、著者は次のように提案します。ちなみここで言う「ノミスト」は「飲みスト」、つまりアルコール愛飲者です。
つまり、ノンアルドリンクを提供することはレストランにとって「客単価を上げる」という効果があるだけでなく、競争力の強化になるということです。
以下ソース
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO59440250S0A520C2000001
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Source: 稼げるまとめ速報